【医師が解説】筋トレにサプリメントは必要か?【エビデンスあり】

小児科医てつろーです。
テニスに筋トレに励んでいる皆さん、サプリメントは飲んでいますか?

今回は、
「種類が多すぎてどれを飲めばいいかわからない」
「どのサプリが効果があるのかがわからない」
という方に向けて、今回はスポーツ領域におけるサプリメントの効果について解説します。

目次

サプリメントって具体的にどういうもの?

「サプリメント」という用語に行政的あるいは法律上の明確な定義はなく、厚生労働省では「特定成分が凝縮された錠剤やカプセル形態の製品」として、いわゆる健康食品の一つとして位置付けています(1)。
一方、国際オリンピック委員会(IOC)は、2018年にサプリメントに関する声明を発表し、サプリメントを「健康効果もしくはパフォーマンス向上効果を得る目的で、通常食事に加えて摂取する食物、食物成分、栄養素もしくは非食物成分」と定義しています(2)。

サプリメントの定義
  • 厚生労働省…特定成分が凝縮された錠剤やカプセル形態の製品
  • 国際オリンピック委員会…健康効果もしくはパフォーマンス向上効果を得る目的で、通常食事に加えて摂取する食物、食物成分、栄養素もしくは非食物成分

サプリメントの分類って?

国立スポーツ科学センター(JISS)による分類では、サプリメントを”ダイエタリーサプリメント/スポーツフード”と、”エルゴジェニックエイド”に分類しています(3)。

引用:田畑尚吾ら:スポーツサプリメントの現状 臨床栄養, 134(2), 200-207, 2019

スポーツ選手の多くがサプリメントを使用している

前述のJISS(国立スポーツ科学センター)がロンドン五輪出場選手を対象に行った調査では、全種目におけるサプリメントの使用率は82%でした(4)。

日本陸上競技連盟のアンケートでは、国際大会代表選手の64.7%がなんらかのサプリメントを使用していました。
また、女子選手(69.5%)男子選手(61.0%)に比べて使用率が高く、シニア選手(68.8%)は20歳未満のジュニア選手(58.9%)に比べて使用率が高かったという結果でした。
また、サプリメントの内容としては、アミノ酸(49.1%)とビタミン(48.9%)が最多でした(5)。

日本陸上の国際大会代表選手のサプリメント成分別使用率
引用:スポーツサプリメントの現状:臨床栄養 134(2):200-207, 2019.

それぞれのサプリメントの有効性と安全性は?

サプリメントの有効性と安全性は、これからサプリメントを飲もうという方にとっては気になるところでしょう。
オーストラリア国立スポーツ研究所(Australlian Institute of Sports: AIS)は、サプリメントの有効性と安全性を、エビデンスに基づいてA~Dの4つのカテゴリーに分類しています。

https://www.ais.gov.au/nutrition/supplements

オーストラリア国立スポーツ研究所によるサプリメントのカテゴリー分類

カテゴリーA

カテゴリーAには、スポーツの特定の状況下で使用するための強いエビデンスがあり、アスリートの使用が許可されているサプリメントが含まれます。

クレアチン➡多くの研究でもっとも有効とされる

筋トレをしている方でクレアチンを摂取している方は少なくないでしょう。クレアチンは、食事から摂取され、体内でも合成される栄養素です。主に筋肉に貯蔵され、エネルギー産生に関わります。クレアチンのエネルギー供給時間は8-10秒と短く、主に瞬発系競技における主要エネルギー源となります(6)。

90年代以降、多くの研究によってクレアチンの経口投与が筋肉内のクレアチン濃度を高め、瞬発系パフォーマンスを向上させることがわかっています(7)。
国際スポーツ栄養学会のレビューにおいても、クレアチンは高強度運動能力を高め、筋量を増加させるためにもっとも有効なエルゴジェニックエイドであると結論しています。

エルゴジェニック効果を得るためには、クレアチンは1日に3-5g程度必要とされます。しかし、牛肉やサーモン1ポンド(453g)に含まれるクレアチンは1g程度のため、食事のみからの摂取では不十分と考えられます。

クレアチンの副作用として、水分貯留や体重増加があります。また、持久系パフォーマンスへの効果もエビデンス不足です。持久系競技、階級系競技、跳躍系競技などでは注意が必要です。

マルチビタミン(ビタミン+ミネラル)➡実は微妙かも…?

ビタミンには、脂溶性ビタミン(A、D、E、K:脂溶性はこれ「DAKE」と覚えます)と水溶性ビタミン(B1、B2、B6、B12、C、ナイアシン、パントテン酸、葉酸、ビオチン)があります。
ミネラルには、ナトリウム、カリウム、カルシウムなどの主要ミネラルと、鉄、銅、亜鉛などの微量ミネラルがあります。

ビタミンとミネラルは、エネルギー代謝、細胞の成長と修復、フリーラジカルからの保護作用など、体内の化学反応を助ける働きがあります。

これらのビタミンおよびミネラルは、基本的に体内で合成できないため、経口摂取が必要になります。
特に、体重制限のある女子アスリートなどでは、食事摂取量の不足からビタミン・ミネラルの不足が起こりやすいと言われています。

しかし、これらの背景のないアスリートにおいてビタミンやミネラルの補充がパフォーマンスを向上するエビデンスは乏しいというのが現状です。また、一部のビタミンやミネラル(特に脂溶性ビタミンや微量ミネラル)の過剰摂取は健康被害をきたす恐れもあるため注意が必要です。

鉄➡摂りすぎ注意、女性や食事制限中には有用?

アスリートにおいて、鉄欠乏は貧血やエネルギー不足をもたらし、主に持久系パフォーマンスを低下させます。
一方で、人体には鉄を積極的に排泄する仕組みがないため、漫然と鉄を投与し続けることは鉄過剰状態を引き起こす恐れがあります。

鉄が不足しやすいアスリートは以下のような方です。

  • 女性アスリート(月経のため)
  • 高地トレーニングを行う持久系アスリート
  • ベジタリアン、ヴィーガンのアスリート
  • 食事制限・エネルギー制限中のアスリート

ただし、医学的な貧血・鉄欠乏がある場合は医療機関を受診し、医師の指導の下で「治療としての」鉄剤投与を行うことが望まれます。

カフェイン➡運動の直前に摂ると効果あり

カフェインはコーヒー、緑茶などの飲料や、エナジードリンクに含まれています。

カフェインは、中枢神経を刺激する覚醒効果、アドレナリンによる脂肪分解効果の促進、骨格筋の運動能力増大などの作用を持ちます。

体重1kgあたり3-6mgのカフェインを運動の1時間前~運動中に摂取することで、瞬発系および持久系の双方のパフォーマンス(特に持久系)が向上するというエビデンスがあります。
コーヒー1杯(150ml)あたりのカフェイン量は100-150mg、エナジードリンク1本あたりのカフェイン量は100-140mg程度のため、運動前にコーヒー1,2杯またはエナジードリンク1,2本が適量と考えられます。

一方で、カフェインの過剰摂取(体重当たり9mg以上)により、嘔気、不眠などの副作用が生じる恐れがあります。
カフェインは耐性があるため、競技の7日前にはカフェインを控えることで当日の効果が高まると考えられます。

まとめ

今回の記事のまとめ
  • プロのアスリートの多くがサプリメントを摂取している
  • サプリメントのうち、いくつかは医学的に有効性・安全性が認められている
  • マルチビタミン、クレアチン、カフェインなどは副作用が少なく、効果が大きいと考えられる

参考文献

  1. 厚生労働省 多様な健康食品,https:www.mhlw.go.jp/topics/bukyoku/iyaku/syoku-anzen/dl/pamph_healthfood_d.pdf
  2. Maughan RJ, Burke LM, Dvorak J, et al. IOC consensus statement:dietary supplements and the high-performance athlete. Br J Sports Med 2018;52:439-55.
  3. 国立スポーツ科学センター, サプリメント@JISS.https:www.jpnsport.go.jp/jiss/Portals/0/images/supplement/pdf/2012.0618
  4. Sato A, Kamei A, Kamihigashi E, et al. Use of supplements by Japanese elite athletes for the 2012 Olympic Games in London. Clin J Sport Med 25:260-269. 2015
  5. 田畑尚吾、真鍋知宏、山澤文裕, スポーツサプリメントの現状:臨床栄養 134(2):200-207, 2019.
  6. Kreider, R. B., Kalman, D. S., Antonio, J., Ziegenfuss, T. N., Wildman, R., Collins, R., Candow, D. G., Kleiner, S. M., Almada, A. L. & Lopez, H. L. (2017). International Society of Sports Nutrition position stand: safety and efficacy of creatine supplementation in exercise, sport, and medicine. J Int Soc Sports Nutr 14: 18.
  7. Chilibeck PD, Magnus C, Anderson M. Effect of in-season creatine supplementation on body composition and performance in rugby union football players. Appl Physiol Nutr Metab 32:1052-1057, 2007
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この記事を書いた人

20代医師です。社会人テニスプレーヤーとして、草トーナメントに参加しています。
「大会未経験の社会人テニスプレーヤーが、大会に参加して1勝を目指す」をコンセプトに、テニスを楽しむ方々を応援するブログを運営しています。

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